◇マリアンヌ回想編


若槻様より、
拙宅の水兵さんで小説を書いて頂きました!!
いえ、書いて頂いたのはもうかなり前なのですが、データを貰えたので!!
なので、水兵さんが主役だった頃のお話となっています^^
そして、私が"何年後か水兵"を作る際に大本設定を含む設定の類をいじり直すという暴挙に出たので、
若干設定が違ったりするかもしれません;
一応、必要最低限は修正要請をしましたので大よそで大丈夫なはずです^^

若槻さま、大変ご迷惑をおかけしましたが、ありがとうございました!!<(_ _)>
この場を借りて最大限の感謝を!!






登場人物ミニ紹介


マリアンヌ
大富豪の次女。
お裁縫が趣味のハイテンションガール。

水兵さん
主人公だけれど、今回はサブ。
金髪碧眼の悲観少年。

ミリー・グッドナイト
今回のキーパーソン。
ロダー家に仕え始めるメイドさん。だけれど…



































◇もくじ


◇序-第1話

◇第2話-第3話

◇第4話-第5話

◇終話-おまけ







◇序





  『私はマリアンヌお嬢様のこと大好きですよ』

 そう言って、その人はいつも愛らしく微笑む。
 柔らかいスカートをはためかせ
 金色の綺麗な髪を揺らし
 蒼い双眸を細め
 私だけに微笑んでくれる。

 私は、その笑顔が好きだった。













◇第一話






 広い広い海の上、巡洋艦ミネルヴァは今日も平和に航海を続けている。

 そんな平和なミネルヴァに響く高笑いは、いつでも極悪的に元気なマリアンヌ・ロダーから発せられていた。



「お~っほっほっほっ、お待ちなさい水兵さん!! 今日はなんとしてもこのふわふわボレロを着てもらうわよっ!!」

「……やっ、やだってば……っ!!」

 甲板の上で追いかけっこを興じているのは自信作のボレロを手に嬉々とした様子のマリアンヌと、顔を強張らせまるで野獣に追いかけられているかのように青ざめている水兵さん。それを眺めている艦員達の視線は生暖かい。

 それもそのはず。この広大な海の上、娯楽と呼べるものは数が少ない。人の不幸はまさにその数少ない娯楽の一つなのだ。

 また、それまではマリアンヌやパンダの暴走に当番制で付き合わされていた艦員達にとって、その娯楽の餌食になる対象がひとりで固まってきたのはありがたいことでもあった。

 そうこうしている内に水兵さんはマリアンヌに捕まってしまい、哀れふわふわボレロに身を包まれてしまう。……が、ここで素直に哀れと思えないのは、ひとえに彼があまりにも女性の扮装が似合ってしまうせいだろう。

「ん~~❤ 水兵さんやっぱかぁわい~~~❤❤」

 ご満悦に笑うマリアンヌの前で、水兵さんはえぐえぐと涙ぐむ。周りでは満足したように艦員達が引き上げている最中だ。

「さぁて、じゃあ次のお洋服つーくろっと。楽しみにしててね水兵さん!」

 言うや否やさっさとそこから引き上げるマリアンヌ。水兵さんの、もうやだよ、という必死の訴えは聞こえていないだろう。

 一人取り残された水兵さんの背を、ぽんと叩く者一人。振り返ってみればそこにいたのは、この艦の軍医であり、看護師であるマリアンヌの直属の上司でもあるロドリグ・エリオットだ。水兵さんはぺこりと頭を下げる。

「今日も災難でしたね水兵さん。大丈夫ですか?」

 やわらかい微苦笑を浮かべるエリオットに水兵さんはいやそうにうなずいた。

 肉体的には問題ないが精神的には全然大丈夫じゃない。だがこの人に文句を言っても仕方ないのを知っている水兵さんは、元より思ったことを口にしない性格も助けて不満は全て飲み込んだ。

 その性格を承知しているエリオットも特に何を言うでもなく無理に着せられてぐしゃぐしゃになったボレロをゆっくり脱がせてやる。さすが医者だけあって手際がいい。水兵さんが気づいた時にはすでにボレロはその手の中でたたまれていた。

「それにしても、マリアンヌは本当に裁縫が上手ですね。資産家のロダー家の娘とはとても――」

 思えない、とはわざわざ口にするまでもない。それが嫌味でないこともたたまれたボレロを眺めるその優しい視線から伺われる。

 改めて言われて、水兵さんはそういえばと思い出す。

 マリアンヌはあれでお嬢様なのだ。……それにしては破天荒だしあちこちで騒ぎは起こすし自分で何でもやるが。

 水兵さんはエリオットを仰ぎ見る。

「……マリアンヌ、何でこんなになんでも出来るんですか……?」

「さぁ……どうしてでしょうねぇ? 艦に搭乗した時から結構なんでも自分でやっちゃう子でしたから。艦員達も驚いたものですよ。あのロダー家の娘が自分から雑用こなすなんて、って」

 口元に手を当てて考え込む様子のエリオットに、水兵さんは彼もどうやら知らないらしいと確認した。余計なことを聞いてしまったかなと考え込んだその背に。

『乗船要望者あり。これより数分停泊します』

 放送が二度流れた。それに応じて流れていた景色が止まる。ややあって、ざわめきが艦の後方から広がっていった。水兵さんとエリオットは顔を見合わせると、珍しく好奇心を出してそちらへと向かう。
途中何人かと行き会いながら辿り着いた先には、豪奢な船があった。
 そこから艦に搭乗して来たらしい人物が、ナディカやヴォネガと会話している様に、水兵さんは我知らずに見惚れてしまう。
 その人物から発せられた人物の名とその人物を呼びに行くようにナディカに言いつけられて驚いたのはそのすぐ後のこと。











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